今週のお題「わたしの本棚」
こんにちは!
「私の本棚」そのものズバリの内容じゃあないんだけど、本絡みなので書いちゃいます。
先日、野暮用で浜松に行ってきたんだけど、帰りの新幹線で暇つぶしに読むものはないかと思って、発車までの僅かな時間で本屋を冷やかしてみたところこんな本が。

やっちゃ場伝―青物市場に伝承された400年の世相と食 (サンガ新書)
- 作者: 神田川菜翁
- 出版社/メーカー: サンガ
- 発売日: 2007/01
- メディア: 単行本
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神田を遠く離れた浜松で出会うのも何かの縁だろうと買って帰ったが、これがなかなか面白い。
プロフィール紹介によれば、著者はかつて神田多町を中心にあった青物市場(秋葉原を経て現在は大田市場に移転)の差配をしていた伊勢長の後裔で、自身も青果市場の仕事に長く携わった人である由。
家に伝わるエピソードや日記をベースに書いたものらしいのだが、一人称で講談調にしてある不思議な文体や、何よりその内容の面白さでなかなか読ませる。
やっちゃ場、というのは市場のこと。「やっちゃ、やっちゃ」と掛け声をかけながらセリをしたからそう言うらしい。
確かに多町から須田町にかけては、今でもわずかながらそれらしいものが残っている。
多町大通り北端にある青物市場の碑。後ろには高級マンション。時代は変わる。
市場の風情を残す松本家住宅
小田原屋。こちらは古い看板を保存しておられる
小田原屋さんの並びにある建物。市場関係かは分からないがこちらも古い。
果物の神田万彦さん。建物は再建だが創業は江戸。ちなみにこの店が開いているのは見たことがないので、もしかしたら市場の仲買さんなのかも。
町内には今も僅かながら青果店が残る。
須田町交差点に再建中の万惣。
本当にわずかながらで、記念碑や松本家住宅(本には松本家の先祖についても書いてあった。やはり市場関係の古い家らしい)ぐらいしか青物市場を直接に思い起こさせるものは無いのだが、よく見てみれば上の写真で紹介したように、須田町交差点の旧万惣フルーツパーラー(ホテルとして再建中)をはじめ、八百屋っぽい屋号の家が点在している。
この本を読むに、どうも「市場」といっても築地市場や大田市場のように専用区画を仕切っていたわけではなく、むしろいまの東神田の繊維問屋街のように同業者が軒を連ねて商売をしていた感じらしい。だから今でも屋号を掲げた家が点在している訳か。
関東大震災までは万惣フルーツパーラーがあった須田町交差点あたりは水菓子(果物)市場、多町を中心に須田町一丁目や司町あたりが野菜市場になっていて、京橋市場などとともに江戸・東京の台所を支えていた。
こんな本に神田を遠く離れた浜松で出逢うとは、まさに奇遇。